[公開日:2025年10月17日]
「BYD」というメーカー名を聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか。「最近よく聞く中国のメーカー?」「EV(電気自動車)を作っているらしいけど、品質は大丈夫?」
無理もありません。日本市場ではまだ新顔ですが、BYDは2023年にテスラを抜いてEV販売台数「世界No.1」に輝いた(※2023年第4四半期実績)、業界の巨人です。
そんなBYDが日本市場に本格投入した戦略的モデルが、今回ご紹介するコンパクトSUV「ATTO 3(アットスリー)」です。
「外国のEVって高いんでしょ?」と思うかもしれませんが、ATTO 3の価格は450万円。さらに国の補助金(2024年度実績:35万円)や自治体(例えば東京都なら最大45万円)の補助金を活用すれば、実質300万円台で手に入る、驚異的なコストパフォーマンスを誇ります。
しかし、安かろう悪かろうでは意味がありません。この記事では、Unicarinfo編集部がジャーナリストの視点で、ATTO 3の安全性、実際の航続距離、そして国産ライバル車と比較した際の「本当の実力」を徹底的に解剖します。
この記事を読み終える頃には、「食わず嫌いだったかもしれない」と、あなたのEV選びの常識が変わっているはずです。
【結論】新型ATTO 3は「買い」か?編集部が注目した3つのポイント

先に結論からお伝えします。Unicarinfo編集部としては、ATTO 3は「条件が合えば、間違いなく“買い”」と判断します。
特に、以下の3つのポイントは、従来の国産EVや同価格帯のガソリン車と比較しても非常に強力な武器となっています。
- 圧倒的なコストパフォーマンス(価格と装備のバランス)
- 450万円という価格設定ながら、パノラマサンルーフ、電動シート、大画面ディスプレイ、V2L(外部給電機能)まで「全部載せ」が標準装備。国産車ならオプション扱いの機能がコミコミです。
- 独自技術「ブレードバッテリー」による高い安全性と航続距離
- BYDが独自開発した「ブレードバッテリー」は、安全試験(釘刺し試験)をクリアするほどの高い安全性を誇ります。WLTCモードで470kmという実用的な航続距離も魅力です。
- 常識を覆すユニークなインテリアデザイン
- 「フィットネスジム」をテーマにした内装は賛否両論あるかもしれませんが、その質感は価格以上。特に、縦横に回転する15.6インチの大型ディスプレイは、他車では味わえない未来感を提供してくれます。
なぜ、これほどの商品力を持つEVがこの価格で実現できたのか。そして、あなたが懸念しているであろう「中国メーカーへの不安」に対する答えは何か。詳しく掘り下げていきましょう。
BYD ATTO 3 最新情報サマリー(2024年モデル)

2024年3月に一部改良が実施され、価格が実質的に値下げ(440万円→450万円になったが、従来有償オプションだったV2L/V2H機能が標準化)されました。さらにディスプレイの大型化など、商品力が向上しています。
項目 | 内容 |
正式発表日 | 2023年1月31日(日本発表) |
発売日 | 2023年3月(初期モデル) / 2024年3月(改良モデル) |
価格(税込) | 450万円(ワングレード) |
航続距離(WLTC) | 470 km |
バッテリー容量 | 58.56 kWh |
ボディサイズ | 全長 4,455 mm x 全幅 1,875 mm x 全高 1,615 mm |
駆動方式 | FWD(前輪駆動) |
国のCEV補助金 | 35万円(2024年度実績) |
何が変わった?エクステリア(外装)の変更点
ATTO 3のデザインは、BYDのデザイン部門を率いるヴォルフガング・エッガー氏(元アウディ)が手掛けており、非常に洗練されています。
- フロントマスク: 「ドラゴンフェイス」と呼ばれる、龍の顔をモチーフにしたデザインが特徴です。EVらしいグリルレスデザインと、シャープなLEDヘッドライトが組み合わさり、先進的な印象を与えます。
- サイドビュー: SUVらしい力強さと、クーペのような流麗なルーフラインが融合しています。特徴的なのはCピラー(リアの柱)のデザインで、龍のウロコをモチーフにしたとされるパターンが施されています。
- リアデザイン: 一文字に繋がったLEDテールランプ(「電光石火」がモチーフとのこと)が、ワイド感を強調します。リアビューも非常に個性的で、街中でも目を引くこと間違いなしです。
- ボディカラー: 2024年モデルから、シックな「コスモスブラック」が追加され、全5色のラインナップとなりました。
一点注意すべきは全幅が1,875mmもあることです。これは国産のトヨタ ハリアー(1,855mm)よりも広く、都市部の古い機械式駐車場では入庫できない可能性が高いため、購入前に必ず駐車場のサイズを確認してください。
質感が大幅向上!インテリア(内装)の進化

ATTO 3の真骨頂はインテリアにあります。
- テーマは「フィットネスジム」: エアコンの送風口はダンベル、ドアノブはグリップ、そしてドアポケットの弦(ギターのように弾ける)など、遊び心満載のデザインが採用されています。最初は戸惑うかもしれませんが、実車を見るとその質感の高さに驚かされます。安っぽさは微塵もありません。
- 回転式ディスプレイ(大型化): 最大の特徴は、ダッシュボード中央に鎮座する15.6インチ(※2024年モデルから大型化)の大型ディスプレイです。これが電動で「縦向き」と「横向き」に回転します。ナビ使用時は縦、動画視聴時(※走行中は不可)は横にするなど、使い分けが可能です。
- フラットな後席空間: EV専用プラットフォーム「e-Platform 3.0」の恩恵で、後席の足元はセンタートンネルのない完全なフラットフロア。大人3人が乗っても窮屈さを感じにくい設計です。
- 充実の標準装備: 日本車なら最上級グレードにしか付かないようなパノラマサンルーフ(電動シェード付)や、運転席・助手席のパワーシート(シートヒーター付)まで標準装備されています。
パワートレインと独自技術「ブレードバッテリー」
心臓部であるバッテリーには、BYDの独自技術が詰まっています。
- 航続距離470km(WLTC): 58.56 kWhのバッテリーを搭載し、日常使いには十分すぎる航続距離を確保しています。エアコン使用などを考慮した実航続距離は、おおよそ350km〜400km程度と見られますが、これは乗り方や季節によって変動します。
- 高い安全性「ブレードバッテリー」: ATTO 3は、リン酸鉄リチウム(LFP)を用いた「ブレードバッテリー」を採用しています。これは、バッテリーセルを刀(ブレード)のように長く薄い形状にし、構造体の一部として組み込む技術です。
- なぜ安全? 一般的な三元系リチウムイオン電池に比べ、熱暴走のリスクが極めて低いのが特徴です。BYDが公開している「釘刺し試験」では、バッテリーに釘を貫通させても発火・爆発しないという驚異的な安全性が示されています。
- V2L / V2Hに標準対応: 2024年モデルから、外部給電機能(V2L)と、家庭に電力を供給する(V2H)機能が標準装備されました。これにより、ATTO 3を「走る蓄電池」として活用でき、キャンプなどのアウトドアや、災害時の非常用電源として大きな安心感に繋がります。これは国産ライバルEVに対する大きなアドバンテージです。
グレード構成と価格|補助金で実質いくら?
ATTO 3のグレード構成は非常にシンプルで、ワングレード(450万円)のみです。迷う必要がないのは嬉しいポイントです。
では、実際に乗り出すにはいくら必要なのでしょうか。鍵となる「補助金」について解説します。
(※補助金額は年度や自治体によって変動します。必ず最新情報をご確認ください)
- 国の補助金(CEV補助金)
- 2024年度(令和6年度)において、ATTO 3は35万円の交付対象となっています。
- 自治体の補助金(例:東京都)
- お住まいの地域によっては、国とは別に補助金が用意されています。
- 例えば東京都の場合、国の補助金に上乗せする形で、最大45万円(2024年度、一定の条件あり)が交付される可能性があります。
【シミュレーション】もし東京都民がATTO 3を購入したら?
項目 | 金額 |
車両本体価格 | 4,500,000円 |
国のCEV補助金 | – 350,000円 |
東京都の補助金(仮) | – 450,000円 |
実質負担額(目安) | 3,700,000円 |
このように、実質価格は300万円台になる可能性を秘めています。これは、同等装備の国産ガソリンSUV(ハリアーやエクストレイルの中〜上級グレード)とほぼ同等か、それ以下です。
「中国メーカー」への不安を解消! 安全性と保証は?

価格や性能が優れていても、「品質は?」「故障したら?」という不安は残ると思います。その点についても、客観的な事実から見ていきましょう。
1. 安全性:欧州で最高評価「5つ星」を獲得
ATTO 3は、世界で最も厳しいとされる欧州の自動車安全テスト「Euro NCAP(ユーロエヌキャップ)」において、2022年に**最高評価の「5つ星」**を獲得しています。
これは、乗員保護性能、歩行者保護性能、安全支援システム(ADAS)の全てにおいて高い水準をクリアした証拠であり、安全性については世界基準で見てもトップクラスにあると言えます。
2. 品質と実績:BYDはどんな会社?
BYDはもともとバッテリーメーカーとして創業し、今や自動車、ITエレクトロニクス、新エネルギー分野でグローバルに事業を展開する巨大企業です。日本のトヨタやパナソニックとも提携関係にあります。
前述の通り、EV販売台数ではテスラと世界一を争うポジションにあり、その技術力と品質管理は、すでに世界市場で認められています。
3. 保証とアフターサービス:全国のディーラー網
日本での販売・サービスは「BYD Auto Japan」が担当しており、全国各地に正規ディーラー「BYD AUTO 〇〇」の開設を急速に進めています。2025年末までに100店舗体制を目指しており、アフターサービスの不安解消に全力を注いでいることが伺えます。
また、保証内容も手厚く設定されています。
- 車両保証: 4年間 または 10万km
- 駆動用バッテリー保証: 8年間 または 15万km(容量70%以上を保証)
特にEVの心臓部であるバッテリーに長期保証が付いている点は、大きな安心材料です。
国産ライバル車との徹底比較
では、ATTO 3は他の選択肢と比べてどうなのでしょうか。代表的なライバルと比較してみましょう。
【ライバルEV比較】日産 リーフ / ヒョンデ KONA
車種 | ATTO 3 | 日産 リーフ (e+ G) | ヒョンデ KONA (Lounge) |
価格(税込) | 450万円 | 約549万円 | 489.5万円 |
航続距離(WLTC) | 470 km | 450 km | 541 km |
バッテリー | 58.56 kWh | 56 kWh | 64.8 kWh |
サイズ | 全長4,455 x 全幅1,875 | 全長4,480 x 全幅1,790 | 全長4,355 x 全幅1,825 |
V2L/V2H | 両方 標準対応 | 両方 対応可 | V2Lのみ対応 |
装備 | ◎ (サンルーフ等も標準) | 〇 (プロパイロット) | ◎ (サンルーフ等も標準) |
【解説】
純粋なEVと比較した場合、ATTO 3の「価格」と「装備の充実度」が際立ちます。
- 日産 リーフは、全幅が1,800mm以下で日本の道路事情に合っており、「プロパイロット」の信頼性も抜群です。しかし、プラットフォームの古さや、航続距離に対する価格の高さは否めません。
- ヒョンデ KONAは、ATTO 3の強力なライバルです。航続距離はKONAが上回りますが、価格も約40万円高くなります。デザインの好みと、V2H(家庭への給電)を重視するかどうかで選択が変わるでしょう。
ATTO 3の強みは、450万円という価格で、V2Hを含む全ての機能を標準装備している点にあります。
【国産SUV比較】ホンダ ヴェゼル / トヨタ ヤリスクロス
「そもそもEVはまだ早い」と考え、同価格帯のガソリン車・ハイブリッド車を検討している方も多いでしょう。
車種 | ATTO 3 (実質370万円〜) | ヴェゼル e:HEV PLaY | ヤリスクロス HYBRID Z |
価格(税込) | 450万円 (補助金後) | 約377万円 | 約275万円 |
パワートレイン | EV(電気) | ハイブリッド | ハイブリッド |
ランニングコスト | ◎(電気代・税金安) | 〇(ガソリン代・税金) | 〇(ガソリン代・税金) |
静粛性 | ◎(圧倒的) | △(エンジン始動時) | △(エンジン始動時) |
装備 | ◎(サンルーフ等) | 〇 | △(オプション多) |
給電機能 | ◎ (V2L/V2H) | △ (AC100V OP設定) | △ (AC100V OP設定) |
【解説】
補助金を使った実質価格で比較すると、ATTO 3はホンダ ヴェゼルの最上級グレードとほぼ同価格帯になります。
ATTO 3を選ぶ決定的な理由は、圧倒的なランニングコストの安さと走行フィーリングです。
- 燃料費: 自宅で充電できる環境があれば、ガソリン代より電気代の方が大幅に安くなります。
- 税金: EVはエコカー減税やグリーン化特例により、購入時の重量税や翌年の自動車税が免除(または大幅減税)されます。
- 静粛性とパワー: EV特有のシームレスで力強い加速と、エンジン音のない静かな室内空間は、一度体験するとガソリン車には戻れないほどの魅力があります。
もし「自宅に充電設備が設置できる」かつ「全幅1,875mmの車庫が確保できる」なら、あえてハイブリッド車を選ばず、ATTO 3という選択肢を真剣に検討する価値は十分にあります。
新型ATTO 3をお得に購入するための3ステップ
ATTO 3の魅力が伝わったところで、賢く購入するための具体的なステップをご紹介します。
ステップ1:購入タイミングと補助金の確認
EVの購入は「補助金」が命綱です。国のCEV補助金は、年度の途中で予算上限に達し、受付が終了(または減額)するリスクが常にあります。
2025年度の補助金情報も間もなく確定する見込みですが、購入を決めたら、まずは最寄りのBYDディーラーで最新の補助金枠の状況を確認してもらうのが最優先です。
ステップ2:支払いプランの賢い選び方(残クレ・ローン)
BYD Auto Japanも、残価設定型クレジット(残クレ)やリースプランを提供しています。
EVは技術革新が早いため、「バッテリーの進化が心配」「数年後のリセールバリューが不安」という方は、残クレを利用して3年後や5年後に手放す(または乗り換える)前提で乗るのも賢い選択です。
ステップ3:今の愛車を「最高額」で売却する【最重要】
新型ATTO 3への乗り換えを決めたなら、今乗っている愛車(ガソリン車・ハイブリッド車)をいかに高く売却するかが、総支払額を抑える最大の鍵になります。
特に最近は、中古車市場でガソリン車やハイブリッド車の人気が再燃しており、予想以上の高値が付くケースが増えています。
ここで絶対にやってはいけないのが、ディーラーでの「下取り」一択で済ませてしまうことです。
ディーラーでの下取りは、新車購入の交渉と一緒くたにされるため、愛車の本当の価値が見えにくく、安く買い叩かれてしまうケースが後を絶ちません。事実、買取専門店での査定額と比較すると、平均で15万円〜25万円も損をしてしまう可能性があるのです。
そこでおすすめなのが、複数の買取業者が競い合うことで愛車の価値を最大化できる「CTN一括査定」です。簡単な入力だけで、すぐにあなたの愛車の「今」の最高額が分かります。
「まだATTO 3に決めたわけじゃない」という段階でも全く問題ありません。
まずは、ご自身の愛車が今いくらで売れるのか、その「本当の価値」を知っておくことが、EVへの賢い乗り換えの第一歩です。
まとめ|ATTO 3は、日本のEV市場の「常識」を変える一台
今回のモデルチェンジ(一部改良)と価格設定を見て、BYDが本気で日本市場を獲りに来ていることが伝わります。
ATTO 3の注目ポイントを再度まとめます。
- 補助金次第で「実質300万円台」という圧倒的コスパ
- 欧州5つ星の安全性と、独自「ブレードバッテリー」の信頼性
- パノラマサンルーフやV2Hまで「全部載せ」の標準装備
- (懸念点)全幅1,875mmが入る車庫の確保が必須
「中国メーカーだから」という先入観だけで選択肢から外すには、あまりにもったいない一台です。
もしあなたが「自宅に充電器を設置できる」環境にあるなら、ATTO 3は、ガソリン車やハイブリッド車からの乗り換え先として、最も合理的でエキサイティングな選択肢の一つとなるでしょう。
気になる方は、まずは公式サイトで詳細をチェックし、そして今の愛車の価値を確かめることから始めてみてはいかがでしょうか。